映画の感想 ※ネタバレだらけ
アベンジャーズ インフィニティ・ウォー(アンソニー・ルッソ、ジョー・ルッソ監督)
言わずと知れた超大作。
アイアンマン、ハルク、ソー、キャプテンアメリカ、スパイダーマン、ブラックパンサーなどなどのオールスターにガーディアンズ・オブ・ギャラクシーも加わり、お腹いっぱいになりすぎて吐いちゃいそうだが、衝撃のストーリーが吐き気を吹き飛ばす。
単体のヒーローだけでも映画を1本作れるのに、そこを全員集合させてお祭り騒ぎにするというのはかつての東映オールスター時代劇を彷彿とさせる。半世紀前から確立されているヒットの法則にハリウッドが本気で挑むとこういう形になるということか。
これは少年ジャンプ映画でもある。
強烈な個性をもつキャラクター達を色々な場所に散らばらせて物語を構築する形は『ワンピース』。今回のストーリーの基軸である「インフィニティ・ストーン」を6つ集めるくだりは『ドラゴンボール』。日本マンガ界の金字塔たる2作品の構成をアメコミ界の巨頭が取り入れれば鬼に金棒だ(実際に参考にしているかどうかは知らない)。
今回の敵はサノス。「石を6つ集めると指をパチンと鳴らしただけで全宇宙の生物を半分消滅させることが出来る」という小学生が思いつきそうな、半ばギャグみたいな悪事に本気で邁進している。そんな乱暴なことは止めなければとアベンジャーズたちが立ち向かうのである。
最終的にはみんなで倒してエンディング。というイメージでいたが、どっこいそんな簡単な結末ではなかった。石を6つ集めてしまったサノスが指を鳴らしてしまうのだ。するとなんてことだ。アベンジャーズの半数が次々と消滅していくではないか!
ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーに至ってはロケット(アライグマ)以外全滅!
今までになくシリアスな展開に絶句。どうなってしまうんだアベンジャーズ。
来年公開予定の次回作でどう物語が展開されていくのか。いまや『スター・ウォーズ』の次回作よりも待ち遠しい。
Vision(河瀨直美監督)
吉野の山のプロモーションビデオかと思わせるくらい、事あるごとに森の実景が挟まれる。確かに綺麗な風景だが、ここまで見せられるとしつこい。
物語もよくわからない。
結局〈Vision〉は何だったの?
伝説の薬草じゃなかったんだっけ?
人の心の中に宿っているモノ的なやつなのか?
それともジュリエット・ビノシュの妄想か?
ビノシュの過去の苦しみが解放されたっぽいことはなんとなく理解できるが、そもそもその過去の行動が謎に満ちているし、きちんと描かれているわけでもない。それ故に消化不良も甚だしい。
理解不能な物語の中で劇的に感情を揺さぶられているビノシュと岩田剛典をよそに、そのダシにされた感のある永瀬正敏が気の毒。
それから『光』の時もそうだったが、寄りと手持ちの画が多いので観ていて疲れる。
それでもSNS等で評判を眺めていると、「魂が浄化された」「綺麗な画に心が癒された」と見受けられるから、映画の見方は様々なんだなと思う。『アベンジャーズ』で心躍らされている私には付いていけなかった。
家族、そして人間の在り方を問題提起している作品だった。
悪事がいつかバレるかもしれないという緊張感をささやかに持続させているのも良かった。
リリー・フランキー、安藤サクラ、樹木希林、柄本明とクセのある芝居が得意な役者にクセのある役をあてがった。俳優部もやりやすかっただろうし、演出側もある程度安心していられたのではないだろうか。もともと子役の芝居をとても上手に撮る監督であるが、大人たちのその流れに子役もきちんと引っ張られていたと思う。
いかにもカンヌを狙いにいった題材で、結果、パルムドール受賞。
正直、そこまでの作品であるかどうかは疑問だが、他のコンペ作品との兼ね合いもあるし、そもそも私の映画観はカンヌ向きではないので、おめでたいことにケチをつけるのはやめる。