⚽熱

ワールドカップは日本の活躍と相まって、熱狂を帯びたまま中盤を迎えている。

全試合をリアルタイム観戦しているが、ここにきて各テレビ局の放送スタンスがハッキリわかってきたので、サッカー観戦以外は時間もあることだし、各局のサッカー熱を独断と偏見で評価していきたい。

基本的に全64試合をNHKが地上波で32試合、残りの32試合を民放4局で分け合う形になっている。なので、民放各局が8試合ずつ放送する計算になる。どの試合をどういう形で放送するかを決めているのかはわからない。

 

NHK】☆☆☆☆☆

BS放送を含めれば全64試合を中継するNHKは力の入り方も一番。

全ての試合を現地で実況している。現地のスタジアムから生の声で伝えているので臨場感も文句なし。

解説陣も充実しており、日本-コロンビア戦では4人を派遣。日本愛に溢れる岡田武史岡野雅行福西崇史早野宏史を配した。特に岡田武史こと岡ちゃんは自らの監督経験を踏まえ、西野監督の置かれた状況がいかに難しいことかを詳しく解説。西野監督が自身の先輩ということもあり、その温かい目線が嬉しい。前回大会も日本への愛が詰まっていて素敵だったが、今大会もその熱さは健在。私の中では今大会ナンバーワン解説者だ。

続くセネガル戦(BS)では、副音声で大越キャスターと岡ちゃんに自由に喋らせる豪華な企画を用意。また、東京のスタジオに岡ちゃんと仲の良い木村和司、熱き男ラモスをゲストに呼び、ロシアのスタジオとのやり取りでは彼らの仲の良さと日本サッカーへの愛が楽しく映し出され、心地よかった。

東京のスタジオはNHKアナウンサーとJリーグ名誉マネージャー・佐藤美希がMCをつとめることが多く、そつのないアナウンサーの進行と不慣れなサトミキのドギマギさが良い味となっている。が、サトミキの進行具合に不満を持っている視聴者も多いらしく、ネットではかなり叩かれている。しかし、後述するが、民放に呼ばれるサッカーを知らないゲストらに比べればサッカーに対する必死さがよっぽど伝わってくる。私は温かく彼女を見守りたい。

また、そのスタジオには東京五輪を見据え、東京五輪世代の若い選手もゲストで呼ぶことが多く、彼らにもきちんとコメントを求め、彼らも慣れないなりに自分の意見を発している。2年後のオリンピックから、4年後の次回ワールドカップをも見据えている構成は立派だ。

 

【フジテレビ】☆☆☆☆

6月いっぱいで対戦カード8試合を消化するフジテレビ。しかし、迫りくる日本-ポーランド戦の放送権を獲得しているのが大きな強み。本選前は3連敗も予想されたが、西野JAPANの活躍が猛烈な追い風となっている。

日本戦を中継できるという事が、しっかりした番組を作ろうという意気込みにつながったのだろう。民放の中では一番素晴らしい構成になっている。

MCにジョン・カビラ宮司愛美アナを据えた。ジョン・カビラの熱さを立てつつ、番組をそつなく進行していく宮司アナ。この二人のコンビネーションは抜群だ。

サッカー知らない芸能人ゲストが呼ばれる他局とは違い、小柳ルミ子、JOY、六平直政とサッカー好きの3人をレギュラーゲストとして固定。サッカー選手を母目線で語る新たなジャンルを確立した小柳ルミ子の視点は新鮮で面白い。まともなサッカーファン目線で語れるJOY、居酒屋ノリになりながらもその雰囲気がマッチする六平直政。見事な三角形を作り出している。

また、マイナー国同士の試合も、その国にサッカー好き(永島昭浩、笹木香利)を派遣して、しっかりそれぞれの国の背景を伝えてくれて、より試合を楽しく見られるように心がけられている。

 

テレビ東京】☆☆☆☆

試合を中継することはないが、サッカー番組『FOOT×BRAIN』(毎週日曜日23:30~)MCの勝村政信の熱さが素晴らしい。

日本に対して懐疑的な意見を持つセルジオ越後秋田豊を向こうに回し、とにかく日本に対する熱さで論陣を張っている。とにかく「世界最大の舞台で戦う日本を日本人である自分たちが信じて応援しなくてどうするのだ」というファンとして一番大事な心を持ち、それを絶えず視聴者に訴えかけている。画面に映し出されるのは俳優ではなく、単なるサッカー好き。この熱さが観る者の心を捉えている。

 

テレビ朝日】☆☆☆

MCは川平慈英竹内由恵アナと村上信五。中継の初戦が7日目(6/20)のポルトガル-モロッコ戦と遅かったため、出遅れた感は否めない。痛恨なのは日本戦を引き当てられなかったこと。ワールドカップ予選はさんざん中継していただけに悔しかろう。日本戦を中継できるとすれば、準決勝か3位決定戦のみ。さすがに厳しい。

しかし、その奇跡信じてか、川平慈英の熱さがビシビシと伝わってくる。6/20の放送ではその2日前に行われた日本-コロンビア戦を川平節でとことん絶賛。興奮のあまり、番組進行がグダグダになっていたが、そこはナインティナイン矢部浩之が笑いでフォロー。川平慈英の熱さが微笑ましくかなり好感が持てた。

残念なのはゲスト選択ミス。サッカー選手を呼ぶのは構わないが、ワールドカップに興味の無い芸能人を呼ぶのはいただけない。指原莉乃徳光和夫大久保佳代子など、本人たちが自ら「サッカーの事、よくわからないです」と発言しちゃうのは観ていて醒める。

それだけならまだしもだが、許せないのは試合に突入すると、その芸能人ゲストがいなくなっていることである。他のスポーツもそうだが、サッカーの醍醐味は試合を観る以外には伝わらない。サッカーのことをよく知らなかった彼らが、試合を観て、どれだけ食いついたかを映してこそゲストに呼ぶ意味がある。試合前の単なる賑やかしでスタジオに来ているだけなら、時間の無駄。この構成に大きな疑問を感じる。

 

日本テレビ】☆☆

こちらは3日目(6/16)の第4試合で初登場。3:40~という放送時間からか、とくにゲストも呼ばず、淡々とクロアチアーナイジェリア戦を中継するだけだった。

その後も第3試合を中継するのみで、番組自体に熱さはない。まあ、時間帯からすれば致し方ない所か。どういう基準で深夜帯が多めの中継になってしまったのだろう。他局に比べて不利な枠におさまってしまった感は否めない。

しかし、熱さを大いに感じたのは日本-コロンビア戦を試合翌日の6/19の8:00~に『スッキリ』を休止してまで録画放送したことだ。前日の21:00~NHKで放映した試合を結果もわからない中で、翌日の朝に看板番組を休止して放送する意気込みは立派。しかも、試合自体が”奇跡”と称された一戦で、大きな賭けに見事に勝ってみせた。

そこまで日本戦に本気だったのは日本-セネガル戦の放映権を持っていたからだろう。

その肝心の日本-セネガル戦、私はNHKの副音声で楽しんでしまったため、その番組構成をほとんど知らない。しかし、MCがさんまと手越祐也タカアンドトシ、ゲストが新川優愛いとうあさこでは盤石の放送体制を整えたNHK-BSには勝てない。

それというのも2年前のクラブワールドカップ選手権決勝の鹿島-レアルマドリード戦である。さんまはレアルを贔屓して、まるで鹿島が勝ってしまうのは良くないことようにしゃべったいたことを私はとても腹立たしく思っていた。日本のチームを素直に応援できない神経が理解できない。

 

【TBS】☆

10日目の6/23のドイツ-スウェーデン戦が初中継と民放の中では最も遅かった。しかし、カード自体は初戦負けのドイツがどのような逆襲に出るかが見どころの試合で、時間帯は深夜ながらも注目の一戦だった。

が、この試合の放送スタンスがよくない。なぜか知らないが、終始スウェーデン贔屓なのである。この試合まで全試合を観てきているこちらとしては、やはり強い国に勝ち進んでほしいし、楽しくない試合をする国には敗退を願うのだが、スウェーデンのサッカーはとても面白くないのである。ジャイアントキリングを成し遂げれば、放送自体は盛り上がるかもしれないが、ワールドカップ全体をみた時にドイツが消えて、スウェーデンが決勝トーナメントに進出する事態はサッカー好きとしては避けなければらないのだ。

それなのになぜスウェーデン寄りなのだ。せめて中立の立場で応援するべきだろう。

試合はロスタイムギリギリでドイツがスーパーゴールを決めて勝利した。ここまでその放送スタンスにイラついていた私としてはかなり胸のすく展開で、結果的には気持ち良かったのだが。

もう一つ解せないのは、竹内涼真

今を時めくイケメン若手俳優がサッカー経験も豊富とくれば現地に派遣したくなるのもわからなくはない。だが、その熱量が足りない。日本を全力で応援する気迫が画面から伝わってこなかった。やはり、勝村政信ばりの熱さを伴ってくれないと。俳優という立場を忘れて、必死になってほしかった。極めつけは日本-セネガル戦を観ていたときのいで立ち。なぜ、ユニフォームを着ないのだ。せっかく現地に観に行っているのに、ユニフォームを着て応援しないなんて考えられないし、意味がない(日本-コロンビア戦を観に行った勝村政信は無論着用)。せめて、青い服を着ていてほしかった。

ワールドカップの後半戦に放送が集中しているTBS。ここまでの低評価をこれから覆せるか。