映画の感想:FIGHTERS THE MOVIE ~Challenge with Dream~

北海道日本ハムファイターズが北海道にフランチャイズを移してから15年を迎えたということで作られたドキュメンタリー映画

ただ単に北海道が本拠地になってから五度の優勝を成し遂げた栄光を語るだけの内容ではない。

なぜ北海道に移ったのか。どういうビジョンを持って球団を北海道に根付かせ、そして選手を育てていったのか。その中で生まれた数多くのスター選手たちは球団をどう捉えているのか。

これは2023年完成予定の開閉式ドーム、天然芝、全面ガラス張りの入口、露天風呂という夢の新球場を作る計画を発表し、そのプロジェクトを成功させたいファイターズのプロモーションムービーである。

選手の活躍よりも、ぶれることのないドラフト戦略、教育方針に焦点を当てて映画化したという点でこれまでの野球モノとは一線を画す。それほど、自分たちの球団経営に自信を持っているのだろう。

思えば、2001~3年の移転直前のファイターズ戦は新宿のチケットショップで対近鉄300円、対西武500円などの価格で売られていた。そして、安価でプロ野球が観られると喜んで観に行っていた。おかげで田中幸雄オバンドーの応援歌は今だに覚えている。だが、その値段で売っていても客席はガラガラだった。

球団として危機感を持ち、そしてウルトラCとも言える北海道移転で人気球団に成長させた。仕事で北海道に行くことが度々ある。そこで会う人のほとんどが日本ハムファンになっている。他の地域に比べて郷土愛の強い県民性と相まって、球団の戦略は着実に実を結んでいる。

果たして自らが贔屓にしているチームにこういう映画は作れるであろうか。

阪神タイガース。05年以来優勝も無く、人気こそあるが一貫したドラフト戦略、教育方針があるようにも見えず、昨季の監督交代劇も表に出せる話にはとても思えない。強いチームとは監督、選手だけではなく、フロントも一体となってこそ生まれるということを思い知らされる。

だが、ここであがいてみたい。

この映画の最大の弱点は新生ファイターズ最大の功労者である新庄剛志のインタビューが入っていないことである。稲葉や森本が劇中で絶賛するが、ついぞ本人は登場しなかった。当時の新庄付き広報の荒井修光のインタビューでは弱すぎる。

深読みすれば、新庄はタイガースに操を立ててファイターズ映画の主役的な立場で出演するのを固辞したのではないか?

勝手な想像で何の根拠もないが、とにかく新庄のコメントが入らなかったのは痛い。

更に言えば、吉村浩GMのコメントも欲しかった。球団スタッフやダルビッシュのインタビューでも名前が挙がっていただけに、現在のチーム戦略を司る吉村GMのビジョンを訊いてみたかった。

そして、この吉村GMもかつて阪神のフロントに在籍していたことがある。確か『本当は強い阪神タイガース』(著・鳥越規央)の文末にある野崎元球団社長の項にその手腕の確かさが書かれていた記憶がある。

なぜ、そのままタイガースにいてフロントを改革してくれなかったのか。無念。

で、何が言いたかったかというと、ファイターズが映画を作れるほどまでに成長したのはタイガース由来の人物なくしては有り得なかった、という悲しい主張である。

ファイターズの核となった人物のインタビューが抜けてはいるが、日本ハムファンでなくとも野球ファンであれば球団の在り方について思い巡らすいいきっかけになる作品である。

まあ、稲田直人による懐かしの寮で食べるカレーの食レポが入るくらいなら、もう少し語るべきことはあったとは思うが。