ナントの空

敗北。

朝から快晴であった。
日本晴れと呼ぶに相応しい空だった。
今になって思えば、それはアルゼンチンの勝利を予感させるスカイブルーだったのだろう。

悔しさと虚しさを胸に抱えたまま帰路に着く。
再び空を見上げる。
青い空に一筋の白い線。飛行機雲の跡だろうか。日本代表が流した悔し涙にも見える。

何が足りなかったのだろう。
敗戦後、松島幸太郎はこのチームよりハードワークしているチームはないと思う、と言った。
それでも勝てなかった。

細かいミスはたくさんあった。
強化試合からずっとあった。その数こそ減らしたが、本番でも勝負処でミスをした。
ノックオンラインアウトミス...

フランス、アイルランドニュージーランド南アフリカ、強いチームはそういうミスをしない。したとしてもリカバリーする力を持っている。
今の日本にその力はなかった。
勝たなくてはならなかった試合でミスをも乗り越えられるような力を付けるには、どうすれば良いのだろう。

無論、我々が悔しいということは、選手たちは比較にならないほど悔しいというのは想像に難くない。
姫野主将、稲垣、松田は「死ぬ気」でワールドカップに臨んでいることをあちらこちらで言い残してきた。他の選手も、口には出さずとも命懸けで挑んでいたはずだ。
もう一度言う。
それでも勝てなかったのだ。
この事実は重い。

この重みに耐え、乗り越えなくてはならない。

今回の戦いを「よくやった」とは言うまい。
なんなら「ふざけるな。お前らの死ぬ気はそんなもんか!」試合直後はそのぐらい叫びたい気分だった。少し時間が経って落ち着きを取り戻し、冷静になった。彼らの4年間の頑張りはずっと見てきた。戦い抜いたことは誇って良いだろう。
だが、彼らは「優勝」を口にしてきた。それがグループリーグ敗退なのだ。
通りいっぺんの当たり障りのない労いの言葉は欲しくないだろう。

4年前は地元開催という圧倒的な地理的優位性があった。あの時の決勝トーナメント進出はアドバンテージを与えられていた。
アウェイの地で、実力以上の力を出しきり、結果を残すことこそが日本ラグビーの進化なのだ。

偉そうなことを書いた。
悔しいからだ。
八つ当たりかもしれない。
日本のグループリーグ突破を確信して2年前からチケットを買い、決して安くはない旅費を投じて、挑んだのだ。
少しくらいの愚痴は許してほしい。

良いこともあった。
フランスの地で悔しさを目の当たりにしたことで、4年後にオーストラリアへ行く理由が出来た。このまま負けたままでいられるものか。

しばらくは空虚さが心を覆っているかもしれない。けれど、いつまでも下を向いていてもしようがない。そもそも、我々は観ていただけだ。下を向く必要が無いし、その意味もない。次の戦いに向けて前進する彼らを励まし、声をからして応援し続けるのみだ。

4年後の戦いの後に、その空が日本晴れだったと言えるように。

この無念を忘れない